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朔哉は煙草を持った手で、指さす。
「失恋にも効く?」
「さあ、失恋したことないんで」
「モテ女かよ、チクショ」
「恋したことないんで」
「それはそれで」
「……擦り傷と一緒なんじゃないですか? 傷は残るかもしれないけど、痛みは取れますよ。解んないですけど。きっと」
「オマエも恋したいって言ってるうちが花だよ。そのうちしたくなくても堕ちるから、きっと」
そこで初めて、ルアは男を見た。
「恋教えてくださいよ。あなた、ジェームスディーンに似てる。煙草が似合うとことか」
「酒が飲める年齢になったらな。オマエ、オドレィトトゥに似てる。雰囲気が」
そこで初めて、ルアは笑った。
つられて朔哉も笑った。
月は、優しくふたりを照らしていた。
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