1人が本棚に入れています
本棚に追加
☽ルアTIME☽
「塾はどうだったんだ」
月の光をたっぷり含ませた、ムーンボトルは中にしまっておいた。
帰宅するなり、いつもの調子の親父。
「ん。大丈夫だったよ」
本当は、今日は塾になぞ行ってない。
今日は満月。人間がオオカミになる時もあれば、女子高生が塾をサボりたい時もある。
「何がどう大丈夫だったんだ?」
めんどくさい親父。いちいち詮索してくる。
自分の部屋に行くのに、リビングを通らなくてはいけない。
サバの味噌煮缶をあてに、晩酌をしている親父をスルーすることは不可避だ。
「予習してたとこだったから、授業内容も理解できた。宿題も難なくこなせそう」
「そうか。あとでテキスト見せなさい」
「はい」
こくり、と頷いて、ぺこり、とお辞儀して、私は早足で自室へ向かおうと階段を上った。
2階に上がってすぐ、左側のドアが私の部屋だ。
左側の部屋は、今は使われていない。元々兄貴の部屋だった。
でももう兄貴はいない。
最初のコメントを投稿しよう!