月をあつめて

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 母親とこの家を出て行ってしまったから。  そのことを何も悲観などしていない。  ただ親父とふたり暮らしというのが窮屈だった。  何故なら――。  不意にノックもなしにドアがバタン! と開けられた。  そこには酒に酔うでもなく、無表情の親父がいた。 「ルア、今日やったテキスト見せなさい」 「ちょっと待って。後ででいいって云ったじゃん。私、着替えたいしお風呂入りたいし……」 「いいから見せなさい」  四の五の言わせない物言いの親父。私は仕方なく学生鞄から現国と物理のテキストを出す。  親父は受け取った冊子をパラパラとめくる。 「何だ。何の書き込みもしてないじゃないか」 「頭に入ってるよ」 「物理のプリントは? いつも配られるだろう」 「先生、配らなかったよ」 「物理はプリント授業だろう? 配られないはずがない」 「今日はテキスト中心だった」  親父は私を射抜くような目で見た。 「……最終コマの物理は、いつも9時40分終わり。いつもきっかりだ。ちゃんとしてる講師だからな。9時51分の電車に乗って、歩いて……」  ああ、サボったのバレてるな――。私は身をすくめた。 「月曜日は10時25分には帰宅する。それが、今は10時42分。どこをほっつき歩いてた!?」  バシッ!  顔に痛みと熱を感じた。  親父の平手打ちが飛んできたのだ。 「……ごめんなさい」  私は謝る。一応。素振りだけ。 「そんなんで国立大目指せると思ってるのか!?」 「……すみません」 「3日メシ抜き」 「……はい」 「財布」 「……はい」  私は鞄から財布を取り出す。親父はそれを奪う。
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