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梁川が真面目に働いていたのは新卒で半年勤めた工場程度のものだったから、理解も及ばない。土方だの鳶職だのをその場しのぎでやってきて、一年中トラックを乗り回す今の仕事が一番長続きしていた。
大して客も来ないから、一度話が盛り上がると尻が長い。5分ほどでタイムアップを告げるようにけたたましいベルの音が響く。隣の配膳口から味噌ラーメンと餃子のセットが飛び出てくる。
「はいどーも、いただきますっと」
ヘラヘラ笑いながらお盆ごと受け取る。仕事中、梁川が唯一きちんと食べる食事だった。
「あ、そういやさ」
いつもなら適当な返事とともにそのまま見送られるところを、芽衣に呼び止められた。
「あ、なに?」
躓くようにして止まった。
「こっちの方まだって聞いたけど、事故続きだからって早まるらしいよ、LED」
道路情報の電光掲示板を指差しながら言った。この夏から、主要道を中心に照明のLED化が始まっていた。確かに高速道路上での事故がめぼしい。
「マジか、早くやってくれると助かるな。やっぱすげぇよ、明るさが段違い」
高速の灯りと言えば橙色だったが、透過性はLEDの方が勝る。
「夜の事故が増えたしね。もうちょい北のジャンクションで、外車が廃車になった死亡事故もあったし。全国ニュースになったじゃん、オッサン一人死んだっつって」
芽衣はつい最近のことのように言ったが、梁川は遠い昔のことのように感じた。
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