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 「夕晴」と私は言葉を遮った。ギロッと夕晴を鋭い眼差しで見つめる。 「誰かが希望を捨てた瞬間、そこでもう終わっちゃうんだよ? 私だけは、信じていたい」 「でも、それって楓が辛くなるだけだろ。日が経てば経つほど……可能性は低くなるんだから……」 「可能性なんて考えた瞬間、負けなんだよ」  私は青春漫画にありそうな台詞を吐き捨てた後、夕晴のことを待たずに歩き出した。 「おい! お前、何か変なこと考えてないだろうな!?」  私は何も言わない。ただ前へ前へと歩く。夕晴はそんな私の後を追ってはこなかった。  そう、可能性なんて考えた瞬間に負けるんだ。分かってる、言われなくても。あれから7年、快斗くんは帰ってこない。一度も連絡がない。そんなの、あの時おじさんが言ったような最悪な結末が起こっている可能性だってあることは頭でも理解している。でも誰も彼が生きていることを信じなくなった瞬間、彼が死んでしまったということを認めることになったみたいで怖いじゃないか。  私はまだ認められない。だって遺体が見つかっていないから。彼はまだ生きていると信じていたいんだ。快斗くんはきっとこの世界のどこかで生きているんだ。そう強く信じていきたいんだ。  でも復讐をしようと思っている時点で、認めてしまっているんだよな。私は矛盾に冷笑を浮かべた。結局、私も他と同じだ。
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