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◇
次の日、私はこっぴどく両親に怒られた。町長にも近所のおじさん、おばさんにも怒られた。幸い私たちの首筋の傷は浅く、大事には至らなかった。しかし傷痕は残るだろうとだけ言われた。私たちは病院でしばらく検査をした後、すぐに家に帰ることができた。
あの現場には誰もいなかった。快斗くんの姿はどこにもいなかった。
知っているのは私と夕晴だけ。周りに詳しい話を求められたが、何も言わなかった。覚えていないの一点張りだった。
姿は違ってしまったけれども、快斗くんがこの世界のどこかで生きていることが知れた深夜の行動を私は後悔はしていない。
あの日見た景色を絶対に忘れない。鮮烈な赤も。優しい光も。彼の言葉も。この首筋に残った傷痕のように、ずっと忘れない。
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