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 この町にはバケモノが暮らしているの? 私たちの知らない所に、バケモノがいるの?  ぐしゃっと何かが潰れる音がした。 「あっ、楓ー! 潰すなよぉ」  作っている途中だった砂のお城が私の手で押し潰されていた。夕晴は心底ムカついたような表情をしている。私は「ごめん」と言って修理した。さっきよりも不格好な砂のお城が建設された。 「不細工だなぁ。俺にやらせろ」  夕晴と場所を変え、夕晴が元の綺麗なお城に直してくれた。私が「ありがとう」と言うと、まんざらでもなさそうな顔で夕晴が頷いた。気を取り直して、夕晴が未完成の部分の建設に着手する。私も手を動かすが、さっきよりも少しスピードを緩めてのろのろと砂のお城を作った。  心の中はぐちゃぐちゃだった。まだ固まっていないコンクリートに、バンバンおもちゃを落とされて、綺麗に整っていたコンクリートが凸凹になった気持ちだ。気持ち悪い。  許さない。  快斗くんを連れ去ったバケモノ。絶対に許すもんか。私の大好きな快斗くんをどこか遠くに連れ去ってしまったなんて、絶対に許さない。  一人っ子の私にとって、快斗くんは大好きな存在だ。憧れていたお兄ちゃんだ。私もああなりたいと思っているほどに尊敬もしている。そんな快斗くんを連れ去った。バケモノが。 「もしかしたら今頃快斗は、──」 「黙りなさい!」  おばさんの制する声におじさんが口をつぐむ。私は動かす手を止めた。ポロっと砂に水滴が落ちた。 「楓? おい、何で泣いてるんだよ!」  焦った夕晴の声が聞こえる。その言葉におじさんとおばさんも気が付いて、私たちの所に駆けつけてくれた。 「楓、どうかしたの?」 「夕晴になんかされたか?」 「いや、俺何もやってないし! 楓が突然泣いたんだよ! 本当だって!」
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