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3 「灰鼠」23号機
「カナタ、244に到着したよ。山猫が通る東西街道の両側は牧場、森に隠れて狙撃できる高台が南北二か所ある。途中のポイントは森で視界が遮られて狙撃に向かない。どっちに陣取る?」
今夜は月が明るく、平原は見やすい。サキの質問に、地図を見たカナタが思考する。
「北で敵を待ちます。ラームさん、月光下の有視界で撃破しましょう」
「了解」
灰鼠は、東の視界が開けた丘に登り切った。カナタは上半身を外に出し、双眼鏡で周囲を見渡す。
「この距離なら僕が確実に仕留めるよ」
「サキさん、ラームさんが外したらすぐ南の高台に移動してください」
「車長。僕の話、聞いてなかった?」
「カナは万一の話をしているんだよ。それよりカナ、移動中は森で敵を見失うけどいいの?」
「ここは山猫の射程外。狙撃を避ける遮蔽物は手前の森か奥の水車小屋しかない。だけど月下の明るい草原をこちらに向かって走るのは自殺行為です。水車小屋を狙うなら南の高台が近くて撃破しやすい」
「ほら、カナが優秀な車長ってわかったでしょ? プライドばかり高い男はモテないよ」
「僕はモテるぞ」
「だからプライド捨てなって」
ラームが「ちぇっ」と舌打ちした。余計な任務だが、それほど難しくない。カナタとサキが目を合わせ、ぷっと吹いた。
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