第四章

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24.「アルファとベータ」  バスルームで、俊輔に髪を洗ってもらってしまった。  俊輔が自分の髪を洗ってる間に、オレは、渡されたボディスポンジで、自分の体を洗う。  シャワーを浴びさせられて、先に出された。  バスタオルで、体を拭きながら、考える。  何もされなかった。……そんなことあるんだ。  …………でも、なんか、分かってきた。  俊輔は「ひどいこと」はしないって言ってた。  多分、オレにそういうことで、何かすることを、ひどいことだと思ってるってことなんだろうって分かってきた。  だって、オレ、今まで、嫌がってたから。  だから、俊輔が何もしないのは……優しさ、なんだと思う。  オレも、あんな強烈な感覚に、さらされるのは、かなりきつかったし。  ……あれは、無くていいなら、無くていいものだよね。  所詮、アルファとベータなんだし。  今の世の中、性別に関係なく結婚ができるといったって、アルファとベータ。オメガとベータの結婚は、ほとんど無い。  やっぱり、フェロモンが関係するんだと思う。  どっちも、そういうことをするためにフェロモンが溢れるのに、それをベータは感じ取れないんだから。そして、アルファとオメガの番のように、そんな風な絆もない。アルファとベータで結婚した末、どっちかに番いたい相手が現れて離婚、て話も聞いたこと、何回もある。  強い本能の、フェロモンに、アルファもオメガも勝てないんだと思う。  ベータのオレには分かんないけど、お互いのフェロモンに包まれながらの行為は、死ぬほど気持ちいいらしいし。  ベータはベータ同士、フェロモンの関係ない、通常の性欲で。好きな相手を選んで、大体はベータ同士で結婚する。アルファも希少、オメガはもっと希少。ほんの少しの割合でしか存在しない。  ほとんどの人が、一般的なベータ同士で付き合って、添い遂げるんだよね……。    ――――えーと……なんだっけ。何の話考えてたんだっけ。  あ、だから。  俊輔とオレは――――所詮、アルファとベータなんだし。  ……っていう、話。   「真奈?」  後から出てきた俊輔が、バスタオルを自分に掛けながら、オレを呼んだ。  振り返って、俊輔と目が合う。  濡れた髪の俊輔は――――……なんか、男っぽくて。  きゅ、と心臓が縮む。 「……お前」  俊輔が、少し眉を寄せて、オレの顎に触れる。 「――――」  前なら、絶対、キスして、そのまま……なんだけど――――。  ドッドッと、心臓が弾む。  キス、するのかな、て、思った瞬間。ふ、と顎から手が離れた。 「――――Tシャツの方が涼しいよな」 「……え。あ、……うん」 「持ってくる」  そう言うと、バスローブを羽織りながら、出て行った。  ――――……。  ……キスするのかと思った。  跳ねてた心臓はまだ収まらない。   (2024/5/13)
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