それは心中にも似ている

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◇  ――我を忘れた僕が、正気を取り戻したとき。  目の前には、死体があった。  すぐに死んでいると思ったのは、そうじゃなければ僕の心が耐えられなかったからだ。  かわいかったチカの顔。その造形は跡形もなく破壊されている。  僕が握りしめていた写真立ては、思い出がたくさん詰まったものだった。付き合い始めたばかりの頃、陶芸体験で二人で作ったんだ。  写真の中にいる幸せにあふれる笑顔の僕らは、赤黒く染まり、もう見えない。チカが丁寧に染めた写真立ての色だって、もうわからないほどに、血液が付着している。 「あぁぁぁあぁぁ!!!!」  行き場のない感情が、考えるよりも先に咆哮(ほうこう)として発散された。  僕の犯行時に落ちたのだろう、壊れて止まった時計の針は、4時44分を指していた。
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