生物学的恋愛論♪

60/157
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
珠恵はチケットを見た。 「今夜だけなんですか?」 と、珠恵は寝息まで立てて寝ている真理絵をチラっと見る。 もし真理絵が酔っ払ってなかったら、相談して一緒に行くのになぁ、と珠恵は思った。 「今日が最終日なんで。あ、無理っすよね?」 と、彼は珠恵越しに彼女の後ろでカウンターに溶けるように突っ伏した真理絵を見ながら言った。 「あ、ええ。そうですね。ごめんなさい」 と、珠恵は真理絵を隠すように彼の視線を自分の身体で遮り、チケットを彼に戻した。 「今日じゃなくても頻繁にライブやってるんで、いつでも。あ、フライヤー渡しときます」 と、彼は慣れた手際の良さでチラシを2枚ギターケースのポケットから取り出して珠恵に渡す。 そこに記載してあるバンド名を見た珠恵が、フフッと笑った。 「ダイアリー・・・・」 温玉が2つ入った味噌ラーメンを啜りながら、 「うちのバンドです。ダイアリー。いい名前でしょ?」 と、珠恵の顔を見ることなく言った。 珠恵の頭の中で今日は"ダイアリー"が渋滞してる。1日に2回もダイアリーに出逢えた。 なんだか不思議だなぁ、今日は。 朝から偶然𠮷原に会えた事も、𠮷原の事をたぶん好きなピンク髪の女の子とのやり取りも。 呼び出されて来てみたら真理絵がチョコまみれだった事も。 オッチャンの労いのシナチクも。 そして、ダイアリーなギタリストさんとの出逢いも。 いろんな事が一気に起こりすぎて、夢でも見ているようで、ボケーっとしてたら、ラーメンを出し終わって一服しているオッチャンと目が合ってしまい、お互いに訳もなく笑った。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!