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「元気ではあったが、なんとも間が抜けたようでの。これまで犬ではあっても、人ではなかったからの」
人になる選択をしていても主のお使いとやらで狛犬として使いに出されこともあった。それが主が新社に祭られて役目が終わった。本当に人になった。
「慣れていけばいいよ。僕は、どっちのコマでもかまわない」
側にいてくれる選択をしてくれたコマ。僕はどちらでも構わない。
「そうか」
コマはほほ笑んで、「慣れるには時間がかかりそうじゃ」とその時間を僕と一緒にいてくれる時間に換算してくれた。
新しい神社は宿の庭の一角に立てられていた。温泉宿の従業員をしながら宮司の資格を取ったシシが拓哉さんの実家の寺からの派遣として使えることになった。祭式はシシが執り行うらしいが、慣れるまでは智哉さんが手伝いに来てくれるそうだ。
お土産に持って来たケーキにシシと相楽さんは喜んでくれた。
帰りの車の中。僕はコマに話した。
「ねぇ、いつか僕がここにケーキ屋をオープンさせたいって言ったらコマはついて来てくれる?」
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