空から来た甘いケモ耳

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「あー、今日も失敗したぁ」  ため息を溢しながらいつもの帰り道を自宅のあるアパートに向かっていた。  手にはケーキの箱を持っている。  街灯に照らされた夜道を歩く。  僕は姉の旦那が経営している洋菓子店でパティシエをしている。甘い物が大好きで自分でも作りたいと思って高校を卒業して製菓専門学校に進学した。  そこで出会ったのが後に姉の旦那になる須金拓哉さんだ。特別講師としてやってきた拓哉さんは既に有名なパティシエで、その技術に一目惚れしたのだ。  拓哉さんの店はカフェも併設していて客は女子ばかりだ。男1人では入りづらくて、歳の離れた姉を誘って通っていた。姉の仕事と僕の学校が終わってからいつも閉店間際に飛び込んでいたのがきっかけで姉と拓哉さんが親しくなって、あっという間に姉は付き合うことになって、甘い物好きの母に反対されることもなくわずか半年で結婚してしまった。
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