空から来た甘いケモ耳

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 仕込みが終わればオリジナルケーキの試作と考案の時間で、自分で考えたケーキの製作ができる。姉もスタッフとして働いているが、早春には子どもが誕生する予定だ。  手に持っているケーキの箱には今日の失敗作が入っている。帰って改めて自分で食べて研究しようと持ち帰って来た。  新作のケーキを試作してみたけど、どうにも舌触りが悪くて商品としては使えそうにない。プラリネクリームという飴がけしたローストナッツをペースト状にしたクリームがうまくできない。分量を調節しながら試作を繰り返している。  拓哉さんの店に入ってから既に1年。  僕のオリジナルケーキは未だに店に並んではいない。  拓哉さんはゆっくり考えたらいいと言ってくれているけど、同じパティシエとして雇われているスタッフは既に採用されているから焦る気持ちもある。 『ケーキは甘いだけじゃダメなんだよ。ドラマが必要だよ』なんて言われたけど、『ドラマ』ってなんだろう。質問しても、『大丈夫だよ。そのうち分かるから』なんて言われて教えてくれなかった。それは技術だけのことじゃないとは分かるけど、今の僕には技術も足りないのだ。 「もっと練習しなくちゃ」
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