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白いフワフワの犬は顔を顰めてガウッと僕の顔に向かって吠えた。
「わぁっ……」
驚いて声を上げると犬はフワリと地面に降りた。大きな身体にそぐわない静かな動きだ。地面に座ると太くてフワフワな尻尾を身体に巻いた。月明かりに照らされた犬は自らが輝いているかのように美しく、見惚れてしまう。
言われたことが分からなくて首を傾げる。
犬のように上に尖った耳をしているけど、耳の間には小さな角のような物もある。
「動物はしゃべったりしない」
「ワシを愚弄しているのか。ワシは下等な動物などではない」
いや、どう見ても動物だ。
「お前が、ワシを見つけた……のだからな」
犬はヨロヨロと地面に身体を伏せる。
「何、どうしたの」
慌てて犬に寄ると、「お前は、いい匂いがする」とさっきよりも弱々しい声で言って、その鼻先をヒクヒクと動かした。
「ああ、ケーキかな」
転んだ拍子にケーキの箱は地面に叩きつけられて潰れてしまっていた。
「ケー……キ?」
犬は呟くと地面に倒れ込んでしまった。
「えっ、ちょっと、おいっ」
声をかけても犬は起き上がらなかった。
「どうしよう……」
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