空から来た甘いケモ耳

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 アパートに近い入り口には公衆トイレがあって、コマが人型から犬型に変わるのに使っていた。反対側の入り口から公園に入る。広い公園は森のように木が生い茂っていて遊歩道がある。その横にはベンチもある。昼間は散歩している人や休憩にベンチを使っている人もいるが、夜は街灯が木に隠れて暗いため、人通りは全くなくなる。  僕も夜は迂回して公園の外を通っている。  コマ、待っているだろうな。  手に持ったケーキの箱を揺らさない様にしながら早足で遊歩道を通る。 「…………」  話し声が聞こえた気がして振り返る。人はいなくて正面に向き直ると目の前は真っ暗になった。 「なっ、何っ」  ドンっと突き飛ばされてすぐ横のベンチに押さえつけられた。 「お前、よくそこのトイレ使ってるやつだよな?」  でっぷりと太った男が僕を押さえつけていた。体重差があって押し退けることは叶わなくて、「何するんですかっ、放して」と訴えるが、「男とお楽しみなんだろう?」と卑下た笑いを浮かべてぐいぐいとベンチに押し付ける。 「放せっ、やめてっ」
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