空から来た甘いケモ耳

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 声を上げると男は自分のポケットを探ってハンカチらしきものを僕の口の中に押し込んだ。息が苦しくて、暴れるが男は怯まず息を荒くして僕の服を引き上げようとする。手をバタつかせて抵抗する。  足で男を蹴ると腹にヒットしたようで、グフっと声を上げた。何度も何度も蹴るが、「大人しくしやがれ」と僕の頬を拳で殴った。 「んんっんっ」  ハンカチのせいで声が出ない。気持ち悪さと恐怖で涙がにじむ。  殴られた頬も痛くて両手、両足を使ってなおも抵抗する。  暴れると口に中のハンカチが湿って隙間ができた。 「やめろっ、放せっ……コマぁ、嫌だっ」  コマの名前を呼んでもコマはアパートにいて聞こえはしないだろう。誰に助けを求めていいか分からず、とっさに名前を呼んだ。 「うるさいぞ」  男が落ちかけたハンカチをさらに押し込んだ。ぐいぐいと上の服を引き上げられたせいで腕の動きが制限される。足をバタつかせても男は、「トイレで何度もやってんだろっ」と怒鳴った。  何をやってるというんだ。コマが変身するの待っているだけだ。 「俺にも楽しませろ」  男は鼻息を荒くしてむき出しにされた腹を撫でた。
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