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気持ち悪さに、「んんっんうううっ」と声を出すが、ハンカチに吸収されて声にならない。
コマっ、コマ、助けて。
ガチャガチャとベルトを外す音がして押しかかる男の髪を引っ張る。痛みに怯んだ男が身を引いて解放された片手でハンカチを引き出す。
「誰かっ、誰か助けてっ、コマっコマァ」
大声で叫んだ。人影の無い公園に声が響いた。
「大声を出す……ぐふっ」
男が再び腕を振り上げて殴ろうとしたのが見えたと同時にパッとその姿が視界から消えた。上にあった街灯の光が直に刺して目がくらむ。ドスドスと鈍い音と共に地面を引きずる音が交互に聞こえて、懇願する声が聞こえる。
フワリと黄色いに近い髪が揺れて、「タルト、大丈夫か?」とベンチに仰向けに寝たままの僕に声を掛けた。
「コマ、コマっ……コマぁ……」
飛び起きるようにして目の前のコマに抱き着いた。
「帰りが遅いから迎えに出たのじゃ」
「うん」
抱きしめ返したコマに抱き上げられた。背中を撫でられて、その肩に額を付ける。
「怖かった……。ごめん。助けてくれてありがとう」
「無事でよかった」
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