空から来た甘いケモ耳

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 地面には男がもがく様にして唸りながら這いつくばっていたが、「さっさと行け」と怒鳴ると「ひぃ」と声を上げて逃げて行った。 「怪我は、させてないかな」 「そんな心配はせずともよい。やつに暴漢されそうになっておったのだぞ」  コマの方が声を荒げるから、「ごめん」と謝った。 「役人は呼ばなくてよいのか?」  役人って、コマに前に保健所のことを話したから、保健所や警察は役人と認識しているようだ。 「コマが助けてくれたし……」 「そんな甘いことでよいのか? かみちぎってやってもよいのだぞ」 「物騒なこと言わないで。それに、警察呼んだら、コマが困ると思う」  コマに職務質問なんてされたらなんて答えていいのか、ごまかしきれる自信はない。それに、少しやりすぎているようにも見える。 「そうか」  コマはむすっとはしたけど、「もう帰りたい」と僕が言うと、「そうじゃの」と僕を抱きかかえたまま歩き出そうとするから、「降ろして、自分で歩けるよ」と抗った。  だけど、降ろされると足に力が入らなくて座り込みそうになったところをコマが慌てて腕をつかんで引き上げた。 「えっと、なんだろう。腰が抜けたのかな」
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