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9.これは人生最高の結末です(安西先生Side)
「絢香!」
俺は走りながら声を振り絞って彼女の名前を呼んだ。
空港のロビーにいる大勢の人たちが俺を避けていく。完全に不審者扱いだったが通り道が出来て好都合だ。
――数時間前。
夜勤明けだった俺は病棟でパソコンに向かっていた。
すると総合受付から電話で面会者がいるから降りてきて欲しいと言われた。
かなり面倒だったが急用だというのでしぶしぶ病院のロビーまで下りていった。
みるとそこには絢香と仲が良かった長髪の男が立っていた。名前は憶えていない。
「安西さん、ですよね」
「……そうだけど」
そう答えると男はホッとしたように息を吐いた。
「ああよかった、お会いできて。僕のこと覚えてらっしゃいますよね? 実は、話したいことがあって……」
ずいぶん憔悴したような顔をしているのが気になったが、俺がこいつと話すことなんて何もない。
「仕事中ですので失礼します!」
そういって歩きだそうとするとそいつは必死の形相で俺の腕を掴んでいった。
「待ってください。お願いですから聞いてください」
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