卵とタヌキと人間社会

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気絶したフリをしているポコタを抱えて、子どもはどこかの建物へと入った。 ここが彼の住む家なのだろう。 人間の住む家に入るのは初めてだが、無機質で、何だか嫌な雰囲気だ。やはり山とは違う。 子どもはポコタをフワフワした布の上に寝かせると、体をゆすってきた。 「アライグマさん、起きて~。突かれたところ痛くない?」 まるで人間を起こすかのような言い方だ。 話しかけても普通の動物は理解ができないのに、何故この子どもは人間の言葉で話しかけるのか。最初に感じたように、この子どもは愚鈍なところがあるのかもしれない。 ひとつ、芝居でもうってやるか。 ポコタはたった今目が覚めたようなフリをした。 身体を起こして、キョロキョロする。 「アライグマさん、大丈夫?」 ポコタを心配そうに見つめる、子どもの顔。 人の良さは美徳かもしれないが、ポコタにとってはいいカモだ。この世は弱肉強食。ぼんやりしていたら騙されるだけなのである。
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