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卵とタヌキと人間社会
ポコタは長年生きてきたタヌキだ。
猫は長い年月を生きると、猫又になるという。タヌキも同じだ。長年生きると、不思議な力が使えるようになるらしい。
ポコタは20年以上生きてきて、最近化けることができるようになった。
できるようになったばかりで、化けることはまだ得意ではない。
思ったものに化けられなかったり、時間がかかったり。
だが、練習すればすぐに上達するだろう。何せ、ポコタは化けタヌキなのだ。昔から、タヌキは化けるのが得意というのが相場である。
ポコタの能力は自身が化けることだけではない。
葉っぱやその辺の石ころを食べ物や金品に変化させることだってできるのだ。
こちらの能力も今はまだ苦手だが、練習すればそのうち上手にできるようになるはずだ。
人間の言葉はかなり前から理解できていた。話すことができるようになったのは数年前。実際に人間と話したことはないが、ポコタ以外の化けタヌキに披露したところ、流暢に話せていると褒められた。言葉の方は完璧だ。
ポコタの最終的な目標は、人間社会に君臨して絢爛豪華な生活を送ること。
とにかく人間が大事に集めている金というものを大量に手に入れて、人間どもをこき使って、自分は悠々自適な生活を送るのだ。
そのためには、手下が必要だ。
20年以上生きてきたとはいえ、野生のタヌキだったポコタにとって人間社会は知らないことが多すぎる。
人間の手下が欲しい。
美女か美男にでも化けて、適当な人間を誘惑するか? まだ化けることに慣れていないとはいえ、そこそこの力はある。
人間を騙すくらいの変化、できないことはない。
葉っぱを変化させた金品で釣ってもいいが、変化させたものはすぐに元の状態へと戻ってしまう。
ポコタ自身が化けた方が効果的だろう。
そうしてポコタは適当な人間を物色するために、山から下りていった。
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