2、この世界のこと

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2、この世界のこと

この世界に来る前のことは覚えていない。 だから、本当に私が召喚人なのかどうかは、実は師匠にしかわからないのだ。 どこかにわかりやすい印があればいいのだけれど、そういうものは特にないらしい。 目覚めて最初に目に入ったのは師匠の整った顔だった。 思わず見惚れていると、召喚人か、と呟かれたのだ。召喚人って何ですか、と問い返すと、気まずそうに視線をそらされた。そこで自分が召喚人という存在なのだと知ったけれど、でもその意味はまだちゃんと知らない。 そういえばあの時視線をそらされた理由を、まだ教わっていない。なぜなら、そんなことも気にならないくらいそれからの師匠はとても親身になってくれたからだ。 召喚というのは特別な力だけれども、誰でも持っている力だとまず師匠は教えてくれた。 皆が持っているのなら特別ではないのでは、と質問をすると、召喚されるモノが特別なんだとか。 ふつうの人は、一回の召喚で最低限必要な召喚物が手に入る。 ちょっとできる人は、数日分の召喚物、普通じゃない人は、質がいい召喚物、もっと特別なひとは、生きているものも召喚できるとか。 生きているもの、つまり人間が召喚されることは特別なことで、珍しくて、領主さまとかお城に招かれてもおかしくないくらいの大事件らしい。 じゃあ私はどうなんだろう、と聞いてみると、だからここにいるんだよ、見世物になりたくないだろう?と言われて、黙るしかなかった。 伝説に残るような知識や知恵や能力がない、それでいて中途半端な召喚力を持つ私がそんなところに行っても、役に立つことはできない。 (せめて少しくらい普通に食べられるものを召喚したい…) もしくは、召喚人らしく、役に立つ知識とか知恵とか、欲しかったかもしれない。
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