えぴ26

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えぴ26

事が起きる一時間ほど前… 数人は教師、生徒一同と清水の舞台に訪れていた。 何度見ても飽きない絶景のパノラマ。この光景が数百年に渡り少しずつ変わるものの、依然と立ち塞がる大自然の壮大さに息を飲む。 浮き足立つ生徒を前に数人は姿勢を正し「では、三時間自由行動。各グループに別れて行動すること!問題行動は起こさない、一般の観光客に迷惑をかけない。15分前には全員待機するように!」と凛々しく声をあげて解散となった。 パラパラと蜘蛛の子のように生徒が散り散りになって思い思いの文化に触れる。 さすが有名な観光地、海外の観光客を楽しませる要素もありつつ、老若男女が楽しめる不変の自然がそこにある。 数人はゆっくり巡回し、滝の水を飲む生徒や土産屋を訪れる生徒が粗相をしないか神経を張り詰めさせて観察した。 数人の鋭い監視があるためか、馬鹿な行動をする者はおらず、大きなトラブルなく時間が進んでいた。 数人の眼光は生徒を見守ると同時に合流するはずの英護を探すのに必死だった。 さすがに生徒の目の触れる場所で仲良くしていられない。結構歩いたがどこにもいないので、英護はかなり隠れるのが上手なようだ。 かなり入口に戻ったところには生徒は全くおらず、ようやくそこで見慣れた姿を目視した。 「安堂さ~ん!」 生徒はいないが観光客はまばらにいる。 注目を浴びないよう英護は元気良く口パクで手を振り走ると、抱きしめられる距離でニコニコ笑って興奮して話しだす。 「うわあ、本当に会えて嬉しいっス!安堂さん疲れは大丈夫スか?メジャーな観光地っスけどめちゃくちゃテンション上がりますね!俺ホラ、カメラ持ってきて!写真OKなとこだけでもかなり撮ってるんス!…安堂さん?」 英護が矢継ぎ早にまくし立てるのもあるが、数人が一切のリアクションを取らないことに不思議がって顔を見て、理解した。 「…………っ♡」 昨晩、お預けをくらい朝からずーーーーっとムラムラを我慢していた。持て余す性欲と疼く性感帯を数人は精神力とプライドだけで耐えていた。全ては生徒の安全のため、しかし英護に出会ったら全てが崩壊し、人様に見せられないほどドスケベな顔して困ったような、誘うような複雑な表情をしていた。 目にはピンク色のハートが浮かび、発情した頬が赤く染まりメガネの表面が曇る。 さすがに生徒同様浮かれていた英護も「ヤバイ」と察したのは下半身が教えてくれた。 数人の色気に充てられ、顔を赤くしながら動かない数人の顔を見られないよう庇いつつ、どこか二人きりになれる場所を探す。
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