えぴ27

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えぴ27

指示通り15分前には完璧に全員集合…とはならず、遠くまで散策していたグループが5分遅れて戻ってきた。それもまあ予想の範囲内だが、後ほどみっちりお灸を据えよう。 それ以外は大きなトラブルもなく自由行動を終えてバスでホテルまで移動する。 バス内は通夜のように静まり帰る。 当然遅刻したグループに数人が説教した後だった。数人の説教は声を荒げないし暴力も振るわない。だが心の底から失望した声と何故約束を守れなかったのか、そこに重点を置いて責めたらこうなってしまった。 女子生徒が唐突に泣き出してしまったのでそれ以上の追及は止め、後日大量の反省文を言い渡したのでこれを同時に目撃した我がクラスに遅刻はなくなるだろう。全く安心は出来ないがな、トラブルは常に目の前にある。 ようやくポソポソと雰囲気を変えるための雑談が始まった頃にはホテルに到着。 毎年お世話になってる古風な民家風の旅館だが数百人の生徒を難なく受け入れられる規模には感服する。 「本日はありがとうございました、また明日もよろしくお願いいたします。」 バスから1番に降りる数人は運転手に深々と頭を下げ、全員集合を待つ。 「では各グループ、事前に配布された部屋割りを参考に速やかに移動するように。」 あまり縛りすぎても、厳しいことに慣れて話を聞かなくなってしまう。淡々と必要事項だけ声をかけ、生徒を誘導する。 「本日は多分にご迷惑おかけすると思いますが、何とぞ今年もよろしくお願いいたします。」 毎年顔を合わせる女将に深々と礼をし、生徒の流通を確認。気づけばススス、と隣に矢車先生がくっついていた。 「安堂くぅん、お疲れでしょ?夕食の後、お姉さんが部屋でマッサージしてあげようか?アハッ♪いやらしいこと考えないでよ?」 「いえ生徒の夕食が終われば教員の打ち上げがあります。矢車先生はその後、夜間の生徒見回りがありますよね?よろしくお願いします。」 「そうね…ええ、分かりましたよ。」 離れていく矢車先生の態度がなんだか怒っていられるようだったが何か失言しただろうか? 「そこ!私語は慎みなさい!」 油断するとすぐ列が乱れる。 これは英護の待つホテルまで行けるか…いや、意地でも絶対何がなんでも行くっっ! 熱い闘志を燃やし、数人も列の後ろを追いかけた。
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