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「ほう…」
英護が予約したホテルまでは徒歩10分もかからなかった。人通りから少し外れてる理由は、その大きさ故だろう。
写真で見たよりもずっと大きく、築数十年は立ってるだろうが全くそれを感じさせない力強さを感じる。まるでここだけお伽の国の何かの舞台と言われても納得する。
外観の白と金を基調にした装飾も全くいやらしさを感じさせず、もてなす心意気を見るものに与える。
かなり遅い時間と言うのにチェックインする観光客が後を絶たないあたり、人気のホテルなんだろう…っと見とれてる場合じゃない。チェックインは0時までだ、ここで入れませんでした、というオチは期待してない。
観光客に紛れてまるで透明の自動ドアからロビーへ侵入する。数組のアベックの受付を待ち、孤独な数人の番でも見目麗しい受付嬢は最高のスマイルを届けてくれた。
「こんばんは、いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか。」
「あ、ああ。既に片割れがチェックインしてると思うのですが…」
「お名前お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「佐崎英護です。」
「佐崎さま…はい、確認取れました。お客様のお名前住所等、こちらのタブレットにご記入ください。連泊分含め、料金は先に頂戴しております。何かお困りのことございましたら気軽に受付にいらしてくださいませ。」
「ありがとうございます。」
タブレットに必要事項をシュ、シュッと書いてる間も、いつ「男性同士でお泊まりですか?」の類いの質問が来るかと心臓が爆発しそうだった。しかし向こうもプロ。顔色1つ変えず、笑顔で対応してくれた。
「ありがとうございます、ではこちらお部屋番号と、お部屋の暗証番号が書かれた紙でございます。こちらの紙で0時過ぎてもロビーの自動ドアは開けられます。明日朝また新しい暗証番号の紙をお渡しします。」
「はい、お世話になります、ありがとうございます。」
後ろにはまだアベックが並んでいる。
邪魔にならないようそそくさと道を避け、会釈する受付嬢に頭を下げてエレベーターに向かう。
緊張であまり見てなかったが円形のロビーは舞踏会場のようだった。また白と金と、赤のカーペットがベストマッチしてる。
目を楽しませる要素として和風の飾りもあしらわれており、いいホテルだと直感した。
だがアベックに囲まれてエレベーターに乗車するのはなんだか切ない気持ちになった…。
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