えぴ29

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朝は少し曇り空だったが、嵐山に着く頃には晴れていた。いつかの修学旅行ではひどい雨を経験したため、晴れてる方がこちらとしても助かる。生徒たちも若さで全力で楽しんでいたようだった。 数人が目を光らせていたためか嵐山でも大きなトラブルはなく、河原に腰かけるカップルに紛れて照れくさそうに学生カップルが腰かけてるくらいだった。少し羨ましくもあるが、純愛は見ていて心が和む。決して油断はしないがな。 何せ次のバス移動先は四条河原町。そして自由行動である。これは宿命かもしれない。毎年必ず三条、五条と離れる輩が現れるため数人は四条河原町を囲うように見回りをする必要がある。これが結構歩いてキツい。 同行の矢車先生には四条河原町内を見回りしてもらうことになっている。 それでもトラブルは避けられない。 毎年のようにため息つくような事件が起こるから警戒は怠らない。事故と近隣の方へのご迷惑さえなければ、おおよそ花丸である。 「…では、くれぐれも危険な行動はしないように。川に近づいたり声かけられても付いていかないこと。何かトラブルがあればすぐに連絡をするように。いいか、初日で遅刻したグループがいたな。今日も同じことがあれば、明日のテーマパークはホテルから1歩も出さず自習と思いなさい。以上、解散!」 数人の淡々としたセリフに生徒一同は息を飲む。明日は誰もが楽しみにしている大阪のテーマパークへ行く。それに浮かれるなという方が無理な話だが、安堂先生は本気で自習させるだろうと絶対的な信頼があった。 事実過去に粗相をしたグループはホテルに帰したこともある。もちろんやりたくてしている訳ではないが、これだけ注意しても必ずトラブルが起こるのだから。 生徒がまばらに散り散りになるのを確認して、数人も巡回ルートを目指す。 さすがに今日ばかりは英護と会う暇もない。 事前の打ち合わせでは今日のうちに土産を買って郵送の手配もしてくれるらしい。 明日のテーマパークではこっそり合流する予定なので数人の内心も浮き足立つ。 平日と言えど人気の観光地に観光客は絶えない。数人は人通りの中でしっかりと生徒がいないことを確認する。数人の巡回地点は完全に四条河原町の外。出会えば容赦はしない。 「…………。」 連絡は済んでいるが辺りを見渡す不審者と思われないよう腕章は付けている。 川や車道は特に目を凝らして生徒の危険がないか警戒を強めて歩く。
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