えぴ29

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それからも主にメンバーとはぐれた、という連絡が絶えなかった。基本的にはわざとじゃないようで合流の連絡も早かった。 巡回ルートは3周した。あと1周すれば集合の時間になるだろう。頼む、このまま何事もなく時間よ過ぎてくれ…。そう願いつつ4周目に突入しようとした矢先だった。 「あーすいません道を教えてくれますかー?」 ニタニタとだらしない声に呼び止められ振り返るとヤンチャしてそうな3人の若い男が道を陣取っていた。本当に観光客だろうか? 「手短に頼む。まだやることがあるんだ。」 「いやココなんスけどぉ、分かりますぅ?」 英護と似たしゃべり方のようで、こちらは品性に欠けている。出来れば話続けたくない、道を教えたらすぐ巡回に戻ろう。 「それはそっちの方面だな。少し距離あるぞ。では。」 「えー、いやいやいや、分かるなら連れてくでしょ普通?」 「常識でしょ。」 「こっちは困ってんだから手助けしてよ。」 白昼堂々、腕を掴まれた。彼らの力は有無を言わさない強制を伴っており、数人も心中やや焦る。シャッターの閉まった店に背を追いやられ、ここぞとばかりに体を触られる。 「やめなさい…!」 英護に繊細にタッチされるのとは全く違う。私が喜ぶように、快楽を生むように触れる優しい手つきとは真逆だ。自己満足の一方的な蹂躙には生理的嫌悪しかない。数人は語気強めに注意したが彼らはニタニタ笑うばかりだ。 「おいあんま抵抗しないぞ、部屋連れ込もうぜ。」 「なんか後ろ姿、遊んでるっぽいんだよな、スーツだけど。」 「どっちでもいいから3人でセ○クスしようぜ。」 冗談じゃない…!こいつらとセ○クスだなんて絶対お断りだ!身を捩って逃げようとしても3人に体をまさぐられていると身動きが取れない。誰かしら見えてるはずなのに、誰も助けてはくれない…嫌だ、嫌だどうすれば…! 「…!」 なんの偶然か、奇跡か、運命のいたずらか? 2つ隣の店から見知った明るい茶髪が出てきた。まだこちらには気づいてない様子で… 「…っ英護!」 顔を見たわけじゃないから確証もないのに、すがる思いで数人は声を上げていた。 周りの人もジワリと注視したが、1番振り返るのが早かったのは呼び掛けられた英護本人だった。 キョトン、としていたが3人の男に囲まれた数人の状況を見て一瞬だけ激しい怒りの表情を浮かべ、すぐニコニコと笑顔に戻った。 「あー安堂さんじゃないスか!この辺だったんスか、奇遇っスね!お待たせしてすみません、それじゃ行きましょうか!」 3人の男には目もくれず数人をまさぐる男たちの腕を引き剥がした。守るように肩を抱くと足早にその場を立ち去ろうとする。 潰すような力で引き離され、呆然としていた3人の男だが多勢に無勢、後ろから野次を飛ばしてきた。 「逃げんなよボコすぞコルァ!!」 「雑魚がイキがってんじゃねーぞコロすぞボケが!!」 「かかってこいよビビってんのかガキが!」 なんと言われても涼しい顔で、しかし数人に歩く主導権はなく肩を抱いたままその場から離れる英護。 「っ…すまない、英護…。」 「もー、めっちゃ危なかったっスね!あのままアパート連れ込まれてマワされるとこでしたよ!」 マワ…回す?クルクル回転させられるのか?いや恐らく何かの隠語だろう、うん。 鈍感な数人さえ今のは危機一髪と分かる。 英護には人気の少ないカフェに連れられても何も疑いなく付いていった。 巡回のこともあるが、電話も落ち着いてる今、心の動揺を落ち着けるのが先と思った数人は英護とお茶をした。
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