えぴ29

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「で?どんな状況だったんスか。おおよそ予想つくんで言いたくなかったら大丈夫スけど。怖い思いしたでしょ?」 「あ、ああ…道を聞かれて。そしたら後ろ姿が遊んでるって…」 「後ろ姿遊んでるってなんスかそれ…」 思わず英護も失笑するほどだ。 「でも安堂さん、確かに魅力的スからもう少し警戒心持って欲しいスよ。職場とか大丈夫スか?」 「み、魅力的だなんて…」 なんか、自分に適してない言葉と思いつつも口角が上がってしまう自分がいる。強く否定も出来ずコーヒーをすすって誤魔化した。 「ほんと偶然なんスけど、あの場に居て良かった…!マジで危なかったんスからね。」 「ああ…。」 英護の心から安心したため息を聞いてようやくじんわり、事件の可能性を自覚して背筋がヒヤリする。生徒もこのようなことに巻き込まれていないだろうか。もちろんそれが最優先だが、あのまま自分がどこかへ拉致されていたら駆けつけることも出来ない。自分のことも気を付けないとな…。 「それにしても、全く動じてなかったな。」 「何がスか。めちゃくちゃ焦ってましたよ?恋人誘拐寸前なんスから。」 「…っ、」 なんか、なんだかなあ。いちいち言い回しで赤面しないといけない。否定もしにくいし。 「そうじゃなくて、罵倒に反応しなかっただろう?怖くなかったのか?」 「それは全然。あーゆー時ほとんどの場合手出して来ないんスよ。マジヤバい奴は宣言無しに殴りかかってきます、あれは遠吠えっス。」 「…慣れてるんだな。」 「え!?いや、そんなまさか!そう思っただけっス!ほんと、それも偶然!いやー怖かったっスよ本心は!本当に!」 露骨に慌ててないか?まあ深掘りするところじゃないか…助けてもらったんだ。 「感謝する。あんな奴らとセ○クスするなんて何がなんでもお断りだ。」 「ハ…?あいつらンなこと言ったんスか。」 わざと明るく振る舞っていた英護の声が急にドスの効いた低い声になったから驚いた。 彼らに迫られるよりよっぽどゾワッとした。 英護から表情が消えるが、指先動かすのもためらうほど空気に緊張感があるのは分かる。 フッと沸き出る額の汗は止められない、正直に答えた方がいいだろうか。 「ああ、3人でセ○クスすると…」 「……………ブツブツ」 唇がほぼ動かなかったので聞き取れなかったが何か物騒なこと呟いた予感はした。 彼らを案じてる訳ではない、これ以上英護に怖い顔をして欲しくない。
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