えぴ31

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えぴ31

学校で貸し切ってて一般客がいないためか、受付は相変わらずがらんどうであった。 さすがに防犯カメラには写ってるだろうがフラリ出掛けることにスタッフが飛び出して問い詰められることはない。 それでも数人は警戒を怠らず気分は忍者。忍び足で旅館から脱出した。 今夜は忘れず、インターホンを鳴らす前に英護に電話して部屋に招き入れてもらった。 全く状況の掴めていない英護は絵にかいたように素っ頓狂な顔で首を傾げる。 「心配してました、コート預かります。」 「ああ、ありがとう。」 宥めるように肩に手を添え、するりとコートを脱いだときふんわりと香ったのだろう。 矢車先生御用達の強烈なコロンの香りが… 「………。」 「英護?」 コートが肘に引っかかったまま廊下で動かなくなったので不思議に思った。振り返ったと同時に何も言わない英護に壁に追いやられ、いい年したおじさんが青年に壁ドンされてしまった。 「どうした…?」 まだ気づいてない数人は英護が不機嫌の理由も分からず、腰がずり落ちて見上げる形でその無表情から汲み取るしかなかった。だがやはり何も分からない。 「…女物の香水の匂いがします。」 英護は見るからに取り繕った笑顔と隠し切れない怒気の籠った声で問い詰める。そこで数人はようやくしまった、と眉をひそめた。 「ああ、実はそのことで話をぉおんっ!?」 スーツのV字の切れ目から鮮やかな手つきで両手を差し込んだ英護は感覚だけで的確に数人のスポブラ越しに乳首を摘まみ、呆気に取られた数人は素っ頓狂な声を上げてしまった。 いきなりのことで事態を把握する以前に、発情した肢体には刺激が強すぎる。全力で走った後のように心臓がリズミカルに飛びはね、あっという間に頬が熱く上気した。 驚きに身を捩ったことでスーツとコートはやや乱れたが、コートが腕から抜けることはなくセクシーになっただけだ。 「答えてください、安堂さん?返答次第ではえげつないお仕置きしますよ?俺、こう見えてめちゃくちゃ嫉妬深いスから。あんたが俺のメスだって分からせるまで教えてあげましょうか?」 「んひっ、ひ、ひぃ、ひいひっ…♡」 抑揚のない声で語りながら徐々にちくびをつねられる。痛いくらいなのに淡々とした声が、緊張感がたまらなくて足がガクガクするほど感じてしまう。もがけばもがくほどコートは腕に絡まり、拘束されることがまた興奮してしまう。もっとちくびにひどいことされたい…!っいやいや、そのために来たんじゃない!と堕ちかけた意識を教師の数人が叱咤激励し、ハッと目が覚めた。 「全て話す、君が納得してもらえるまで何でも答えるから、頼むからちくび、取れるっ…♡」 「あっ…、と、すみません。」 数人の懇願に英護も我に返ったようで、いつもの声色顔色でパッと離れた。 数人はもう、壁に背を預けなければ立てないほど息が上がっている。危なかった、そう思うと同時にコートに縛られ身動き出来ない状態であのまま弄ばれたらどうなっただろう、と興味がいつまでも頭の片隅に残ってしまった。 「じゃあソファーで聞きますね。」 「そうしよう…」 お互い、その場に止まってもベッドに行っても肉欲のまま快楽に溺れてしまうことがなんとなく分かっていた。文化的なコミュニケーションするためには座って対談する他ない。 今度こそコートを脱いだ数人はインスタントコーヒーで弾む心を落ち着かせ、隣に腰掛けた英護に事の顛末を洗いざらい打ち明けた。
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