えぴ31

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「…そして今、ここにいる。」 「………なるほど。」 静かに相づちを打って話を聞いてくれた英護がようやく掠れた声で返事してくれた。 どうやらコロンの誤解は解けたらしい。 それからすごく神妙な顔して黙りこんでしまった。やはり私の対応は教師として大人として人間として間違っていたのだろうか? こんなに答えを聞くのが怖いのは中学一年生の頃高熱のまま解答したテストが返ってくる時以来だ。 「私は今すぐ彼女に謝罪した方がいいだろうか?」 答えを待ちきれず切羽詰まった声で問いただすと眉にシワを寄せていた英護が顔を上げ、キョトンと首を傾げた。 「あーいや、これは人格というか性格の問題なんでしょうけど。俺は何も言わなくてもいいと思います。恋人、同性って目を抜きにしても押し掛けられて迷惑したのは安堂さんですし、俺ならもっとひどい言葉掛けちゃうと思います。安堂さんはちょっと心配し過ぎじゃないかと。」 「そうか…それを聞いて安心した。君が誰よりも真面目で優しいことは私が心得ている。非人道的な行いではなかったと思えるだけ、心の罪の意識が僅か軽くなったようだ。」 「急に褒められると照れるんスけど…」 顔を背けた英護の耳が赤いため、本気で照れてるのだろう。昨夜、自分とセ○クスして戸惑い乱れた可愛い様子が思い出される。 「矢車先生には明日誠心誠意謝罪することにする。君に相談して良かった。真摯に聞いてくれてありがとう。決意を固めることができた。」 「…言っておきますけど俺、そんな立派でイイヤツじゃないスよ?」 不意に低い声で腰を抱き寄せられたが、見つめあう笑顔はいつもの英護だから数人は安心して反論した。 「いや、君はイイヤツだ。相談に乗ってくれて人として尊敬しているし昼間も助けてくれてありがとう。感謝してもしきれないな。」 「へえ、それじゃ実は安堂さんの話を聞きながらずーーっとあんたを犯すことしか考えてなかった、って言ったら幻滅します?」 「おか…」 自然と目線が低くなる。英護が余裕ない笑みで舌なめずりして見せなくてもご立派になった下半身を見れば彼が昂っていることは数人さえ理解できる。瞬時に顔が熱くなる。 「ええと、これはどういうことだ…」 「安堂さん、男は獣スよ。優しく相談に乗るのは心の隙間につけ入るためっス。諸説ありますが。俺はずっと、あんたが抱きたくてたまらない。」 「………っ。」 下心全開なのだが、これだけはっきり言いきられることと彼の声が良すぎるためか、呆れを通り越して一緒に欲情してしまう。 「女心を分かるためメスになりましょうとか、ちゃんと話聞いててもそればかり。だって最高のご馳走が目の前にあって立たない男はいませんよ。」 「あ、う…」 とうにセ○クスした関係と言うのに数人は生娘のように目をそらし、顔を赤らめるその隙に英護は背中に手を滑らせ、ソファーに押し倒し馬乗りになる。 「ごめんなさい、こんな奴でガッカリしました?」 …ガッカリする訳がない。 自分だってずっと、刺激されたちくびが物足りなくて疼いていたんだから…。 「お互い様だ…だから、抱いてくれ…」 「もう…安堂さんはいつも俺の欲しい言葉をくれる。」 困ったように笑いながら、吸い込まれるように互いに顔を寄せてキスをした。
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