えぴ34

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さすがにテーマパークは貸し切りとはならない。団体予約で事前に連絡しているが一般客も多くいる。 広場の隅っこで生徒全員を整列させて座らせ、ここはしつこいほど注意点を挙げておいた。それでも彼らはこれから1日遊び呆ける入場ゲートに期待を膨らませ、輝かしい瞳が釘付けになっている。だから悪さをすると帰すぞ、など無駄な脅しは止めておいた。 全員に聞こえるように掌をパンパンと鳴らし、僅か生徒と全員に注目される隙に最後に忠告した。 「ここで人様に迷惑かける言動する者はそれ相応の人生を過ごすと思いなさい。遊覧結構、だが君たち一人一人が自覚を持って、責任感を持ちなさい。君たちは子供であり大人だ。私を失望させないでくれ。以上解散!」 その言葉がどれだけの人数に響いたか分からないが、解散の言葉を聞いて誰もが我先に入場ゲートをくぐりたがった。しかし心の奥底では安堂を恐れているためか騒ぎ立てはせず、そのうち順番に並んで全員が通り抜けた。 その光景を見て数人は疲れた声を鼻から洩らす。今年は遊具の一部を破壊したとか、そういうトラブルがありませんように。 見回りは怠らないが数人の目だけで全ては把握できない。だからすがるような思いでそう祈ることしかできなかった。 「………。」 入場ゲートをくぐる時、チラと後ろを振り返る。英護が偶然いないだろうか、とうつつを抜かす頭を振って、毅然とした態度でテーマパークに入場した。
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