えぴ4

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交通規則を守りながら車をかっ飛ばし、例のカバン専門店に着いたのは約束の5分過ぎ。 同じコインパーキングに車を停めて、帰宅する人々の波に逆らって待ち合わせの場所に到着した。もう怒って帰ってしまっただろうか…? 「あ、アンドウさん、お待たせー」 ちょうど店員は店の玄関で扉の鍵を閉めていた。立ち上がる動作で慣れた手つきで鍵を財布に仕舞うと、こちらに愛想よく微笑んでくれて心底安心した。 「こちらこそすまない、7分30秒も遅刻した…」 「そうスか?閉店作業任されてたから全然気づかなかったですよー」 皮肉でも気遣いでもなく、あっけらかんとそう言われるとホッとする。店に入るための三段の階段を降りると、店員はニッと無邪気に笑ってみせた。 「チョー楽しみにしてた。それじゃ行きつけのホテルあるから行きましょ。アンドウさん車?俺免許あるけど車持ってないんすよ、助手席乗せてください、へへ。」 普段なら初対面の他人を車に乗せたりしないんだがな、時間に遅れた手前、バツが悪い。 「む、うむ、いいだろう…。」 では車に案内しよう、と踵を返したところで店員は音も立てず背後にくっつき、耳元でこう囁いた。 「これからめちゃくちゃえろいことするのに、逃げずに来てくれてありがとう♡」 「~~~~~~~~っっ!?!?」 耳元で…ダイレクトイケボは止めてくれ… 下半身にキク…っ♡ 思わず力が抜けてその場に膝をついた。 「あはは、アンドウさん行きますよー?」 一体なんなんだ、この超絶イケボ囁き声のカバン専門店の店員は…?
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