えぴ37

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「せっかくスから俺に貼らせてくれませんか?」 「ああ、それじゃ頼む…。」 何が楽しいのか分からないが英護はウキウキしてることが傍目からも分かる。素直に了承するとすかさず彼はパッケージを開封し、嫌な予感が的中がした方を取り出した。ピンク基調の可愛いキャラクターたちがミニマム化し、より一層可愛くなった絆創膏。…これを本当に自分に貼るのか?男だぞ、いや大人だぞ、いやおっさん、いや私教師。 ものすごく個人的にはお断りしたいが英護はご機嫌で貼る準備をしてゴミを自分のポケットに突っ込んでいる。絆創膏はこれしかないことは分かっている、貼らなきゃ歩けないほど痛いことも理解してる。…でもこれじゃなきゃダメか? 「安堂さ~ん貼りますよ~」 乳首の痛み以上に精神衛生的な問題で数人は頭を抱えてしまったが英護に肩を叩かれて覚悟を決めて顔をあげた。正直覚悟なんて決まってない、全てを諦めた。 「んん…」 丁寧に貼ってもらったが一瞬触れた英護の指が冷たくて気持ちよくて声が漏れてしまった。そしてやはり、自分にはもったいなさずぎるファンシーな絆創膏。今日ほどスポブラで肥大化乳首を保護していて良かったと思うことはない。シャツの上からだと柄まで透けていただろう。 「ありがとう。では行ってくる。」 「はいいってらっしゃい♪」 時間は刻一刻と迫る。シワを伸ばし完璧にジャケットを羽織ると英護に見送られる形で数人はいそいそとトイレの個室を飛び出した。 そして土産屋のレジを通りすぎるところで見てしまった…。そりゃあ、冷静に考えればパーク内で怪我する人もいるだろう。レジ横には無地の絆創膏も普通に売られていた。 英護のやつ!!!!! 怒りで半泣きになりながらも平静を装い、店前で待つ毛利の方へ歩いた。 「先生、大丈夫ですか?顔が赤いしなんだか目が腫れているような…」 「あ、ああ大丈夫だ。毛利こそ体調はどうだ?」 心配してくれる生徒に先ほどまでの真実を明かすのはあまりに卑猥すぎる。とっさの嘘も思い付かず話を逸らしたが毛利は不安げに頷いた。 「はい、もう歩けます。休憩時間ありがとうございました。お手数かけてすみません。」 「構わない。それでは巡回を再開する。」 そこまでは数人も教師として対応できたが、やはり歩きだすと全然違う。絆創膏のおかげで胸の痛みは軽減されているが何が悲しくていい年したおっさんにピンクの絆創膏を選んだのか英護に小一時間問い詰めたい。 透けていないはずなのに周りの視線が怖くて仕方ない。いつ不手際で胸元を指さされると思うと無駄に精神的に疲労した。
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