えぴ4

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土地勘は強い方ではないため、助手席に乗せた店員に言われるがままの住所をナビに打ち込んだ。ここから車で20分…いつもなら気にしない距離だが隣に見ず知らずの男が乗っているだけでこうも緊張するものなのか? 店員は全く緊張してなさそうに見える。 沈黙のままも気まずいので運転中軽く自己紹介することにした。 店員の名前は「佐崎(ささき)英護(えいご)」。本人の強い希望で「英護」と呼び捨てすることになった。今時生徒相手でも名字にさん付けなのに…呼び捨てなんて親兄弟以外では初めてかもしれない。 一応年齢も聞いてみたが成人してることしか分からなかった、まあそれだけ分かれば十分か。旅行好きで、カバンにこだわるうちにあの店でバイトするようになったそうだ。 しかしまあ…おそらく地毛の茶髪を襟足より少し伸ばし、色白の肌にややタレ目。身長は自分より若干低いくらいだがスポーツ体型で幼少期は天使、青年期はイケメンだともてはやされたのは一目瞭然である。何より、信じられないほどイケボ。一言呟かれるごとに背筋の腰の辺りがザワザワしてしまうほどだ。 私の個人情報は、学校名などは伏せて…安堂数人(あんどうかずと)、教師であること。 嘘は得意な方ではないのであまり話さない方が得策と思い、話したのはそれくらいだった。 個人的な話をする前にホテルに着いてしまったな。 「着きましたねー」 「………。」 てっきりら、らぶほてるかと思って駐車するのを躊躇ったが一見よくあるビジネスホテル。なんなら同じ名前のホテルに出張先で泊まったことがある。英護が間違えたのではないか? 「本当にここか?」 「ん?はい、ここラブホっすよ。」 「な!?!?」 ら、らぶほてると言うものは「ご休憩♡ご宿泊♡」の看板があるのではないか?特別ホテル街という様子でもないし…最近のらぶほてるは進化してるんだなあ。 人目につかないうち英護の後ろに隠れるようにしてついていった。 英護はすりガラスの張られた受付をスルーし、ランプの点灯で空いてる部屋を見つけるとどんどん進んでしまう。私はどうにかして監視カメラの死角を歩けないかと苦労しているのに、堂々と道の真ん中を歩いていく。 「ノーマルの部屋でいいっスよね?」 「大丈夫デス…」 やや薄暗い廊下。左右の部屋のランプが点灯しているということは、そういうことだろう。ききき、緊張してきた…。自然と体が縮こまり、声もか細くなってしまう。これからこの部屋で、男同士でせっくすするのか…!?
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