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「ありがとう、大丈夫だ。さほど痛くないから軟膏は不要だよ。」
精一杯笑顔を取り繕い声も震えないよう気をつけたが彼の発言で一瞬にして覆される。
「えーそうスか?部屋に入ってくるとき胸を押さえていたから相当痛そうでしたけど…」
う、ぐ…
勝手に1人でちくびをいじった罪悪感から無意識に起こしていた行動をバッチリ見られていた。そしてそれは都合良い展開へと運ばれる最高の材料であった。
嘘に嘘を重ねる所業を止めたのは、何の気なしに英護が数人の胸をつついた時だった。
「あぐっ…」
「あ、ほら。痛いんでしょ?やせ我慢しなくて大丈夫スよ。俺に気を使ってるんスか?」
ばかばか、なんで声を出したんだ…!
だんだん英護は本気で心配した顔になり、心なしか申し訳なさそう度も上がってる。
これはもう…腹を括るしかない。
全てを諦めた数人はのろりとシャツを脱ぐ。
そしてまな板の上の鯉のように、好きにしろとスポブラをずらした胸を男らしく突き出す。
素直な数人を見て英護は安堵のため息を洩らす。
「それじゃ絆創膏ゆっくり剥がしますね。これも軟膏塗りながらがいいかな。」
「んんっ…」
白い箱から白い軟膏を取り出し中身を指に取った英護の手が胸に触れる。やや冷たい感覚が火照った胸回りに心地よく、唇を噛みしめた。
「痛かったら言ってくださいね。」
英護は丁寧ににゅるにゅると絆創膏全体に軟膏を行き渡らせ、ふやけた端をゆっくりめくる。ああ、もう言い訳するまい。数人の目線は達観しておりどこか遠くを眺めていた。
「ん…安堂さん、昼間より乳首腫れてません?これ何か感染してませんか?俺が弄りすぎたせいスか?」
そして1秒も欺くことは出来ず、予想通りに英護は動揺した。はあ…と数人は小さくため息を飲み込んだ。
「違うんだ…すまない、これは自分でしたんだ。」
「自分でって?」
目を丸くさせてキョトン、とした英護に事の顛末を簡潔に伝えていた。眉の上がっていた英護が、ゆっくりと眉を下げて不機嫌そうな顔をする。最推しの『ぼいす』の部分は省いたが…それでも心配させすぎたようだ。
「すまないえい…っんごっ」
改めて謝罪をしようとしたところでベッドの上に押し倒される。唇が触れそうな距離で英護の顔が接近するが色っぽいムードはなく、ややキレてるようにも見えるがこうして見ると彼は声だけではなく顔もカッコいい、と呑気に見とれてしまった。
「困りますよ、安堂さん。」
「なに…?」
「あんまりドスケベだと、そのうちこの乳首をガリッ…って歯で噛んでやりますよ?」
狙いを定めたように、ちくびの真下に指を突き立てられた。本当に噛まれるのかと思った。
「~~~~っっ♡」
多分…多分、そんなことされたら…私は…♡
失禁するかもしれない…。教師が、冷血アンドロイドと恐れられる私が…っ!♡
「痛いの嫌でしょ?ねー?だったら快感の限界、引き際を知ってください。怪我したらしばらく何も出来なくなるんスよ?」
なるほど、それは非常に困る。
「なるほどそれは困る…!」
頭で考えた言葉がそのまま出てしまった。
それを悟ってか英護も怖い顔からいつもの穏やかな笑顔でクスクス笑う。
「ほんっと安堂さんはえっちなこと、セ○クスが好きっスねぇ。」
うむむ…認めたくないが、その通りだ。
元々チクニーするのも大好きだったが英護と付き合ってから、特に開発期間。それ以上にセ○クスを覚えてからは猿のようにそれしか頭にない。気持ちいいことは大好きだ。
「…もっと俺に沼らせないと。」
「ん?ぬま?」
「いえいえこっちの話です~♪」
瞬時に切り替えたが顔を上げた瞬間、英護は怒るでもなくなぜか…怖い顔をしていたような気がする。だが今こんなに明るい笑顔を見せてくれているからやはり気のせいだったのだろうか。
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