えぴ5

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えぴ5

「安堂さんはシャワー浴びてきました?」 「う、うむ!」 「そっか、じゃあ俺入って来ますね、汗かいててベタベタするんすよ。」 「う、うむ!」 「適当にそこ座って待っててください。」 「う、うむ!」 シャワー室へ消える彼を睨むように凝視して見送った。姿が見えなくなると、脱力して安堵した。 どうしてしまったんだ私は…同じ返事の繰り返しで、これではアンドロイドどころかポンコツだ。部屋に入ったことで緊張感は限界まで高まっていた。 部屋の様子でも見て落ち着こう…。 ウロウロと徘徊する。部屋の広さは10畳ほどかな。 そう、まず英護は入口で券売機のようなものを操作していた。黄色のボディで使い古されたそれは現在「ご休憩♡」の画面になって料金表示されている。…完全にらぶほてるだ。 そして機械の対面には洗面所。どうして洗面所がここにあるんだ?洗面所は洗面所にあるものだろう?んん??まあいいか。 壁はチープな花柄で、全体的に桃色だ。 ところどころ壁紙も剥がれてるが、使用される頻度が高いのだろう。埃などはほとんど積もっていなかった。窓は小さく、封鎖はされていないが子供でも通れないほど小さい。 念入りにカーテンを閉めておいた。 そしてベッド…部屋の真ん中にキングサイズのベッドが鎮座してる。飾りなどはなく、至ってシンプルな組み立てベッドって感じだ。 シーツは清潔でピンと張っている。 「うっ…」 なんだ、このベットサイドチェストに置かれた謎の箱は。ミニミニ自動販売機って様子で「ローター1000円」「コンドーム1個300円」など売られている。盗難防止なのかチェストと固定されているが、そんなに沢山中身が欲しい人がいるのだろうか?世界は不思議だ。 頭元には半分ほど減った箱ティッシュと、銀色の細長い袋。なんだろう、お茶かな。 壁際にはビジホでもよく見る小ぢんまりとしたテレビが置かれてる。案の定有料。 これで二時間5000円って高いのか安いのか相場が分からない。自分がシングルで泊まるビジホは一晩でそれくらいなのに… 「あれ?もう待ちきれなくてベッドに誘ってるんですか?」 「わはゃ!」 自分自身でも聞いたことない裏声と存在しない言葉で短い悲鳴が上がってしまった。 無意識にベッドに乗り上げていたが、まるでベッドが100度の熱湯になったかのような身のこなしで離れた。 バクバクと収まらない鼓動を鎮めつつ振り返ると、なんてことだ…英護は下半身に白の薄いタオルを巻きつけているだけで裸だ!! これが公道だったら通報されるぞ!? まだ若干髪が濡れているのかガシガシタオルで拭きながら、爽やかに微笑んでいる。 …イケメンだから許されるのかもな。 体型がそうだったがやはり筋肉質で、腹筋シックスパックってほどではないがスッと筋の通ったやせ形。見苦しい毛など一本もない。
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