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恥じらいを隠すためにわざと彼の胸を軽く押して遠ざかり、わざとらしく咳払いをした。
「コホンッ…わ、分かった。君を信頼して約束しよう。それでいいか?」
「はいっ!ありがとうございます!」
顔が縦に割れそうにニコーッと笑う英護は胸を押されたことも忘れ数人に飛びついて抱きつく。クッ…やはり少しだけ可愛い。
ちゅ、ちゅと全身にキスされるのも翻弄されるがまま許す。
踊り出しそうな本心を隠すためにわざと素っ気ない態度でツンと斜に構えるが頭の中はいやらしいことでいっぱいだ。修学旅行が終わってもこれから楽しみが続く。
英護と会う日はいつにしよう?我慢した分、どんなことをしてもらおうか妄想が尽きない。とにかく沢山触ってイカせて欲しい。
体力には自信がある、だが会う日に合わせて自慰する調整も……
「……?」
今、楽しい妄想に浸っていたはずなのにふと思考の外から疑問が投じられる。キスに夢中な英護ではない、他でもない自分自身の頭…から?その割になぜか急に胸がざわついた。
私が欲しているのは恋人の英護?
それとも快楽を与えてくれる自分ではない物体?
そんなの…当たり前じゃないか。
自分の中では答えは決まっている。
だがその答えが非常に……であることを自覚している、だから決して声には出せない。
なぜ、なぜそう思う?
自分の答えが間違っている気がする、それなのにどうして体が動かないんだ?
私はどうかしてしまったのだろうか…。
私は、私は………
胸騒ぎは一晩中晴れず、ただ時間だけが無為に流れた。
もう1つの答えを選べない自分が嫌いだ。
道徳とか、常識とか、人としてとか関係なく。
何も分からない何に脅えているのか何が不安なのか何も形にならない無闇やたらな漠然とした恐怖。
でも一点、なんとなく思うことがある。
自分の中で何か大きな変化が起こるんじゃないかと。
頭よりも先に心がそう訴えているのに鼓動が激しくて聞こえない。
私は…
私は…?
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