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英護と定期的に交わるようになって、生活の何もかもが良くなったわけではない。
毎回びっくりするようなキスマークを施してくるので完璧に見えないように隠さなくてはいけない。一応付ける場所は配慮されてるしこれからもっと寒くなるからジャケットを脱ぐこともない、かと思いきやふと日差しが強い日にぐっしょりと汗をかくこともある。
そしておかしいことに、あんなに抱かれて意識飛ぶほど犯されているのに朝目覚めれば体力はほぼ全回復。しかも体中が敏感になり、衣服が擦れる刺激もむず痒くてたまらないことがあるほどだ。
でも、1番の悩みに比べればそんなことは「些細なこと」だった。
1番の悩みは現状2つある。
1つは矢車先生から露骨に無視をされている。なんとか修学旅行での無礼を直接謝罪することはできた…と思う。数人を見るなり泣き腫らした目で睨み、一言も会話をしてくれないから分からない。何が悪かったか、何をすれば許して貰えるか尋ねても真っ赤なルージュの唇をわなわな震わせるだけで基本無視されてしまう。
どこから流れたのか修学旅行で私が矢車先生の部屋に押しかけ乱暴をしようとした、と噂されたようだが数人は全て真摯に潔白を証明し、彼自身他の教員一同からするとそういう肉欲が薄そうな印象を持たれていたため、すぐガセネタだったと噂は消滅した。
しかし相変わらず矢車先生には無視された。
そうして弱る数人の「隙」を見つけたのだろうか…。ここ最近、教頭の距離が異様に近い。人が見ていなければ急に抱きつくような仕草をしたり、尻を撫でたり揉んだりされる。数人はただ、動揺していた。
なぜ男の自分にそのようなことをされるのか分からなかったが性欲剥き出しの教頭でなくても数人は日に日に色気を増しており、本人は完全に無自覚でもフッと切なげにため息つくことは男の欲望を駆り立てる以外なにものでもなかった。
そしてなぜ、数人が動揺しているのか。
嫌か善いかで言えば間違いなく嫌だ。
一方的に尻を撫で回されたり突然太ももに硬いモノを押し付けられているような気がして…「ぐふぅぐふぅ」と喘ぐ教頭の不気味な声が夢に出て憂鬱になるほど嫌だ。
ではなぜ拒絶しないのか。それは数人が責任感が強すぎて全て自分で受け止め解決しようとしてしまう悪いクセもあるが、それと同じくらい「分からない」のであった。
鈍感な数人でさえ、自分がセ○クス好きであることは自覚している。自分で乳首を可愛がることも英護に抱かれることも快楽ならなんでも好きだ。それは体の感覚がそうなんだと思っていた。誰に触られても同じ反応になると。
だが違った。教頭に撫でられると、声を聞くと、たまに股を触らせられると怖くて怖くて動けなくなる。
教頭でなくても、誰かにそうされれば自分の体はすぐ快楽に順応し、快感を求めると思っていたのにそうではなかった。
相手が教頭だから?と言うことよりもどうして英護なら気持ちいいのか、分からなくて。
その理由がいつまで経っても分からなくて、数人は段々と過激なセクハラに心を病み元気を無くしていた。
その無意識の変化に本人よりも先に気づいたのは英護であった。
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