38人が本棚に入れています
本棚に追加
「安堂さん、目の下隈出来てますよ。」
「気にしなくていい。」
眠ると教頭の顔が、声が夢に出る。
それが怖くて嫌で何日か眠れていない。
そのストレスを全て性欲で解決しようと数人は性急に英護をベッドに押し倒し求めたのだが、英護は真面目に頭を横に振った。
「特にここ数日、様子がおかしいスよ。エロかったのは前からスけどガッツキすぎというか…何か忘れたいとか、逃げたいとか。」
「…どうしてそう思う?」
図星をつかれ、嘘が下手な数人は誤魔化すことしか出来なかった。しかしまるで探偵のような推理力は確かに変だと思ったんだ。
「それは自分を見ているようで…いや、安堂さん。ちゃんとお話しましょ。」
そっと胸を押し返された時、今日は抱かれないと悟ってしまい感情が爆発した。
「いやだ…!」
セ○クスをして何もかも忘れて眠る間。
それしか心休まる時がない。
「いやだ、めちゃくちゃにしていいから…抱いてくれ!」
忘れたいだけなんだ、安心したいだけなんだ。英護も強い感情をぶつけてくれれば、いっそ…!
「っと…」
本気の男の力で押し倒されれば英護も対応できない。成すがまま組み敷かれ、八つ当たりのように首筋を思いっきり噛まれても何も抵抗しなかった。ひたすら冷静で声さえ凍るように冷たい。
「満足しましたか?」
「う、ぐ…っ」
なんで、どうして責めないんだ…怒らないんだ。
自分でも何を欲しているのか、セ○クスしたいのかしたくないのか、頭の中がぐちゃぐちゃになってパンクしそうだ。顔の真ん中がじんわり熱くなり、気づけばボタボタと涙を溢して子供のように泣きじゃくっていた。
「う、うう、ぐすっ…うああ…っ」
「…………。」
赤子のように体を丸め、泣き崩れる恋人を英護は至って穏やかに対応し、落ち着くまで頭を撫でた。そしてなぜか、数人と同じくらい苦しそうな表情をして唇を噛みしめて耐える。
「安堂さん…俺は、あんたの助けになりたいだけなんス。何を言われても全て受け止めます。」
「いやだ、こわい…怖いんだ、もう無理耐えられない、逃げたい、忘れたい…!」
「…本当に昔の自分を見てるみたいだ。」
ガタガタと震える数人の体を、決して離さないよう強く抱きしめた。
「逃げたいなら、一緒に逃げますから。忘れたいなら、俺にできることなんでもします。だから…何があったのか教えて?」
ああ…もう、彼の声が優しくて…暖かくて
なんだかボーっとしてきた。涙が熱い…。
話すことで自分の弱さとか、誰かを巻き込むとか考えるだけで嫌だったけれど…。
話す、だけなら…それでほんの僅かでも心が軽くなるのであれば…
もう、どうにでもなれーーーー。
「………じ、つは…」
数人は掠れる声で震える唇を開き、今自分の悩み全てを英護に打ち明けた。
最初のコメントを投稿しよう!