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えぴ46
二人でベッドの端に並んで腰掛け、長い時間話をした。
上手く言葉に出来なくて、こういう時小説で学んだ数多の表現で伝えたいのに結局カタコトでゆっくり話すことしかできなかった。
英護は同情的な眼差しを向けて静かに頷いていたが数人がひどいセクハラを受けている話から徐々に憤怒の激情が我慢出来なくなっていた。
「なんだそいつ…!最低すぎる!訴えましょうよ!」
英護はすぐそう言ってくれた。自分もそれで何もかも解決するのであれば了承したいくらいだったのだが…
「しかし、教頭先生には奥さんも子供もいらっしゃるし…」
やはり何か自分の勘違いでは…?
「関係ないスよ!安堂さんがこんなに傷ついてるんスから!」
「う、うん…でも証拠なんて何もないんだ。」
教頭先生は必ず誰も見てない場所、見えないところでしか接触してこない。机の下とかで股間を撫でられたりすると、反応して怯える自分が周りには異常に映るんじゃないかと想像すると怖くて我慢するしかなかった。
「マジか…今なら証言だけでも良かったような…俺、調べますよ。絶対許せない。」
英護の怒気のこもった震える声を聞けば本気で、自分のことのように考えてくれていることが分かる。
「…でも、1番嫌なことは…」
学校中に、生徒全員に、父兄全員に自分が「男にセクハラされた教師」と認識されることが耐えられなかった。
そうなれば自分は学校どころか世間から指をさされて笑い者になり、とても生きていけない、とまで打ち明けると英護はグッと堪えた。
「…それでも何もしないで、このままでいいはずがないっス。」
「それは、そうだと思うが…」
教頭先生が飽きてくれるまで無言を貫くしかない、と思っていた。他に何か手立てがあるだろうか?
「うーん………………。」
英護はしばし沈黙し、長いこと唸っていた。
数人は申し訳ないと思いつつも英護が何か閃いてくれないか、期待してしまっていた。
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