えぴ47

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えぴ47

英護の発案した作戦は、内心ヒヤヒヤしていたが想像以上に上手くいったようだった。 数人は生徒たちにこそ厳しい態度を取るが同じ先生方とは打ち合わせなどでよく交流しているし、多数がいる前で「従兄弟を預かり送迎している」旨を説明すると全員が協力的な姿勢をみせてくれて驚いた。 受け入れられた事実としては数人は根っからの真面目人間で他の先生の仕事の手伝いや催し事の手配など周囲が嫌がることも率先してやってくれるから信頼が厚いのだが全て無意識の数人がこの時気づくはずもなかった。 それから帰る時間になり教頭が飲みに誘おうとすると誰かしらが「安堂先生、お迎えあるんでしょ?気をつけて帰ってくださいね」と温かい言葉をかけてくれるから教頭に怯える数人は涙が出そうなくらい救われて… おかげで数日もすれば教頭も誘えなくなった。 これで一件落着…と思いきや教頭は全く諦めていなかった。 セクハラは加速し、少しでも1人でいようものなら密着して股間をすり付けてきて鳥肌が消えない。はあはあしながら「君が悪いんだよ」とか「えっちな体だ」とかナメクジのようにねっとり囁かれても嫌悪以外ない。なるべく他の先生と行動するように心がけても必ず1人になる隙はある。 トイレから出てきたタイミングや、トイレについて来られたこともありそれがトラウマで数人は学校で催した時は全力で教頭を振り切り、生徒たちのトイレまで走らなければいけなくなった。 もう…疲れた。どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないんだ。いつそう心が折れても不思議じゃなかったのに、精神を保てたのは他でもない、英護の存在だった。 身も心もボロボロになって。 出勤することも憂うつで。 投げ出したい、逃げ出したいと思いながらも帰宅しようとフラつく足で学校の駐車場へ向かうと職員用裏口に毎日必ず英護が笑顔で立っていた。 初日こそ裏口に不審者?と怪しまれていたが英護は見た目も声も最高にかっこよくて性格も良く、すれ違う教師に朗らかに挨拶していたようですぐに教師一同から「彼が従兄弟さん?」と好印象で認められたようだった。 英護の笑顔が、いや英護がそこに居てくれるだけで心が洗われる、いや救われる。 頑張って良かった、耐えて良かったと。 そうして傷を誤魔化すことは良くないことであっても、そうすることでしか数人の正気は保っていられなかった。 「安…安堂先生、お帰りなさーい」 「ああ、ただいま英護。」 毎日決まった時間に帰れる訳でもない。ずいぶん待たされているはずなのに、彼は飛びっきりのスマイルで呼んでくれるから駐車場でそう挨拶することが習慣になりつつある。 そして、この奇妙な生活の唯一良いところがこの後だ。なんとほぼ毎日英護がそのまま家に来てくれる。名目としては教頭からのストーカーからの保護だが、結局毎日のようにえっちなことをしてる。 連日セ○クスは出来ていないがしっとりとキスをしてる時間、教頭に触られた場所、撫でられて気持ち悪かった場所を英護の暖かい手で癒してもらうことが何よりもご褒美だった。 この生活なら教頭のセクハラも我慢出来る、と慢心したのは1ヶ月ほど経った頃… ちょうど、世間はクリスマスの時期だった。 安堂数人の人生最悪最低の事件を、自らの手で招いてしまう…。
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