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今年は暖冬か、と思いきや冬至を過ぎてから一気に冷え込みが厳しくなってきた。
朝の天気予報でも北の方では雪が降っているらしい。
それでも明日がクリスマス・イブとなればテレビだけではない。全国の恋人たちがソワソワと浮き足立つ特別な日だった。
数人も去年までは全く…無関係で、なんとなく帰りにスーパーに立ち寄って冷めたチキンをなんとなく食べて寝るだけの行事だったが今年は違うようだ。
「寒いから」そんな理由で1つのソファーで身を寄せ合いピッタリくっつきながら過ごす日にも慣れた頃合い、英護が楽しそうに声を弾ませて話してくれた。
「安堂さん、明日はクリスマスっスね!」
「ああ、プレゼントが欲しいのか?」
「もう…俺を子供扱いするのはやめてくださいよぉ。」
「はは、冗談だよ。」
穏やかな声でそんな会話を楽しむ余裕さえある。英護は拗ねたふりしても肩を寄せる数人の額に何度も柔らかいキスで触れ合った。
「俺たち恋人でしょ?夜はもちろん…期待してください♡」
「ん、ん…」
「あは、安堂さんえっちな顔してる♡俺こういう記念日とか好きっスから忘れられないクリスマスにしましょうね。」
「あまり、言わないでくれ…」
明日までお預けに出来なくなってしまう…。
「エロいことだけじゃなくて、明日はケーキも買ってきますから!ボスってば、うちの店はクリスマス便乗出来る店じゃないーって俺のこと休みにしてくれたんスよ。俺、料理あんまり得意じゃないんで色々美味そうなもの買ってきますからね。」
ボスはやっぱりもしかして関係に気づいて…ありがたいような、申し訳ないような…
「そういうことなら…」
「おっとお金はダメっスからね?これは俺がやりたいからやるんス!」
…相変わらず金が絡むと頑として聞かない。
その場は一旦引くが何かお返ししないと、夜だけじゃなくて…何か特別な…
付けっぱなしにしていたテレビから「街角で聞いてみた今年の恋人プレゼントランキング!」のような内容が流れてきてふと思った。さっきは子供扱いして冗談で聞いたが…
「英護、プレゼントは何がいい?」
「あー、またガキ扱いスか?拗ねますよ?」
「違う違う、今まで無縁の行事すぎたが…その、恋人にも贈り物はするのだろう?君が素晴らしいディナーと夜をプレゼントしてくれるなら私には何が出来るだろうか。」
「安堂さんっ…」
英護は思いがけず感動してしまい声を震わせ、ぎゅーーっと数人を抱きしめた。
「もう♡そうやって考えてくれてくれることが何よりもご褒美っスよ♪」
そこまで喜ばれるとそれでもいいか、と絆されるほど数人も若くなかった。
「そうか、それでどんなものがいい?」
「今のは何も要らないって返事っスよ!」
そうして彼は無欲にニカーッと笑いかける。
「しかし…」
「あ、じゃあじゃあ、クリスマスから名前を呼んでもいいスか?」
「名前?」
「うん、数人って。」
「!!!!」
名前なんて別に構わない、どうでもいいと思っていたくらいなのに彼の素晴らしい声で呼ばれた瞬間耳から全身にビリビリっと強い電流が駆け巡った。その反応を分かっていて英護が耳を孕ませようと耳元に唇を寄せて囁く。
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