えぴ50

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それからの時間の経過は早かった。 まるでクリスマスを盛大に祝うスーパーが翌日から大晦日どころか正月の準備を始めるくらいあっという間に時は過ぎた。 クリスマスの翌日から正月三日まで学校は休みだったので授業はないが、数人はちゃんと毎日出勤した。 精神的なショックは大きかったがウジウジ閉じ籠るよりも体を動かす方がいくらか気が紛れた。 そうなると次第に冷静になり、だんだんと毒が回るように後悔、恐怖、絶望感がこみ上げゆっくりと咀嚼し、思考を繰り返し「あの時ああすれば良かった」とばかり考えてしまう。平たく言えば完全にトラウマになっていた。 それでも数人は努めて何事もなかったかのように振る舞い、いつも通りに仕事した。 クリスマスの翌日から教頭は「風邪」で休んでいたが半月ほど経って正月もとっくに明けてから全身を包帯でグルグル巻きにして、松葉杖をつきながら出勤した時は教師一同驚いていた。 本人曰く「風邪で転んで怪我をした」と頑なに主張していたが目元までボコボコに腫れており、何か事件に巻き込まれたのではないかと心配していたが教頭はヒステリックになって人を寄せ付けなかった。 ただ数人にだけは恨みがましいナイフのような鋭い視線を向けるだけで何も言わなかった。数人はその視線を避け、静かに息を潜めていた。 その日以来、教頭が学校に来ることはなくなった。怪我を理由に辞職したらしい。
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