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英護は10分ほど戻らなかった。
その間に数人は自分のコーヒーと英護のココアを用意し、ポツンとソファーに座って待っていた。
どうしても良くないことばかり考えてしまう。玄関が再び開いた音にも過敏に反応し、迎えに行くところだった。しかしグッと堪えてソファーに座していると小走りで廊下を進んだ英護が申し訳なさそうな顔を覗かせる。
「すみません、話が長引いちゃって…遅くなりました。」
誰から、なんて言葉が喉をこみ上げた。
それをゆっくり呼吸に合わせて飲み込む。
プライバシーに踏み込むのは恋人と言えどよろしくないだろう。努めてなんでもないように振る舞った。
「大丈夫だ、寒かっただろう。飲み物でも。」
「ああ、ありがとうございます。」
胸の内は不安で孤独で心配でたまらないのに、いつも通り詰めて真横に英護が座ってくれるとそれだけで心から安心してしまった。
「ん、おいしい。」
ココアを一口含んだ英護は心臓の高鳴りを鎮めようと目を閉じ、深く深呼吸した。
それから息をひそめて次の行動を見守る数人と顔を合わせる。お互いかつてないほど真剣だった。
「もう…先に話してもいいスか?」
「あ、ああ…ああ、構わない。」
このまま夕食の時間なんて無理だ。
言葉も発さず料理の味もしないことは明白。
どんな内容を言われても覚悟したつもり…だがそれは表面だけで、次第に数人は泣きそうな顔になる。それを誤魔化そうと唇を固く引き結んで耐えた。
「じゃ、あ…いきなりぶっちゃけちゃいますけど…」
緊張した様子の英護も、もう一度深呼吸をして覚悟を決めたようだ。
来るなら来い…なんでも…!
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