えぴ53

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まず、今までは朝になると英護は食事もせず急いで帰ることが多かった。 それが朝の時間をゆっくり共有出来るようになったのは良いことと思う。 出勤時間は数人よりも遅いが、移動時間を含めるとほぼ変わらない時間に家を出る。 必要だと思って英護に合鍵も託した。 「ありがとうございますっ!」と抱きつかれたときは驚いた。自分の中でも結構覚悟をして渡したが英護なら良いと思ったし何より喜ばれたことが嬉しかった。 料理は基本的に数人がやったり、忙しい時はスーパーの惣菜を買って一緒に食べることが多かった。「これからは俺も手伝います!」と英護がやる気を出してくれたのは大変ありがたいことだが彼の手料理は食材に新たな可能性を感じさせてくれると言うか退屈な味覚を刺激してくれると言うか……食材を無駄にすることもあって、その度にひどく落ち込むので今まで通り数人が担当することにした。 意欲はあるため、休日などは一緒に調理などしてみようと思う。可能な限りイレギュラーな行動がないか細心の注意を払いながら。 帰宅は英護の方が早い。今までは学校に来てもらったり迎えに行ったりしていたがバスを利用してでも先に帰った方が早い。部屋の掃除や洗濯、風呂の準備を買って出てくれた彼にお任せしている。 大抵自分の方が帰りが遅いのだが、たまに…週に1回ほどは英護も付き合いがあったり、シンプルに仕事で遅くなったりすることもある。そんな時不安になるかと思ったが、必ず彼は帰ってくることと家のどこを見ても彼の持ち物があることが安心感になった。 それでもベランダに自分のパンツと英護の下着が並んで干されてるのを見ると恥ずかしくて顔が熱くなってしまう。 人間、慣れる生き物だ。 1週間もすれば同棲も慣れてきた。 以前までは毎日何回でもセ○クスしたいほど欲の化け物であった数人も例の事件以来少し落ち着きを覚えた。寄り添って夜の時間を過ごすだけでも満たされた気持ちになるのはそれだけ「余裕」のあらわれだろうか。 「ぼいす」のチャンネルを開くことも日々少なくなっていた。
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