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動揺を隠し通したつもりだったが嘘の下手な数人は明らかに挙動不審で、すぐに英護には何かあると察されてしまったようだった。
「安堂さん、俺に何か隠してますか?」
と尋ねられた時に動揺しすぎてテーブルに置いたコーヒーを溢してカーペットに世界地図を作ったこともいけなかったらしい。
そこまでしておいて咄嗟に「なんでもない」と答えてしまったせいで珍しく英護が拗ねてしまった。
一緒のソファーでピッタリと真横にくっついているが唇を尖らせ不服そうな顔して返事してくれない。ああ、こんなことなら最初から全部話しておくべきだった。気まずい空間で謝罪のタイミングを計れず、ただ無為にテレビの画面をメガネに映していた。
「………。」
たまに英護はグリグリと額を擦り付けたりはするが、何かアクションを起こすことはない。きっと傷つけてしまったんだ、謝るタイミングは計るものじゃない、作るものだ。そう気づいて、破裂しそうな心臓の鼓動に負けないよう喉から震える声を絞り出す。
「な、なあ英護…」
「………。」
抱っ○ちゃん人形のように腕にくっついていた英護はスマホで何かを見ていたが視線だけこちらに向けてくれる。途端に胸が痛み罪悪感にみまわれる。自分のことを助けてくれた彼に、どうして自分は下らないプライドで隠して、嘘をついてしまったんだろう。望まれるならなんでも話すし土下座だってする、だからもう一度だけチャンスを…
「数人さん、テ○ガ買ってきて」
「すまっ…え、て○が??」
一瞬脳が混乱した。て○がって何だ…あ、あれか、赤と白の性的用途のオモチャ。え、理解しても分からない、突然なんなんだ?ますます頭の中がかき乱される。謝罪を優先するよりも気になることが先に口をついて出た。
「ええと、それを買ってきてどうするんだ?」
「決まってるでしょ、数人さんに使うんス。」
「え、えっえっえ?」
の、脳が思考を放棄してる。なんだこれ、どういう展開なんだこれ?
みるみる顔が赤くなり困惑する数人を見て英護はいささか機嫌を直したのか、意地の悪いニヤニヤを見せる。
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