えぴ56

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数人はすぐにシートベルトを装着し愛車のエンジンをふかすと次なる目的地へ向かった。 薬局のはす向かいにあるコンビニエンスストアの駐車場へ停車する。 微かな記憶の中で、コンビニエンスストアにも置いてあることがあったのを咄嗟に思い出した。シートベルトを外し、ドアを開け運転席を降りて施錠し、入口のガラス戸から店内を鋭い眼光で観察した。 よし…手前のレジはマダムだが奥のレジは中年の紳士だ。あの場所なら視覚的に目立たないし何より同性であることが心の負担を軽減させる。同性相手でも恥ずかしさは同じくらいだがさっきの薬局で買う256倍マシだ。 早速颯爽と入店し、買い物かごを右肘にセットする。 注意深く店内を観察すると、あった…1番下の段に、ここは筒型とチューブ型のみらしい。どちらも使用したことないのでどちらが良いか分からないが先ほどなんとなく買おうとしたチューブ型をかごに入れた。 なんとなくその上に隠すように、手近にあった商品の「焼きのり」を被せた。サイズといい完璧である。焼きのりを買うついでに買うことにしたという設定にしよう。 「っ………。」 ああ、なんということだ…!あとはレジに向かって会計を済ませるだけと言うのに足が震えて動かないっ…。それでも1歩、また1歩と歩を進めるごとに心音が高鳴り、破裂しそうに拍動している。あまりの頻脈に立ちくらみしてきた。 それでも意思を強く持って膝に力をこめ、レジにたどり着こうとすると… 「!!」 ステルスしてる数人に気づかなかった中年の紳士がレジまであとわずか4mというところで「隣のレジをご利用ください」という札を立ててバックヤードに行ってしまった。 なんて日だ…運なんて、確率なんて…っ! 隣のレジはマダム。やはり異性のレジでこれを購入する胆力、私にはない。残り時間は体感10分を切っただろう…ああ、ここまでか…。玄関で待つ英護は酷く落胆するだろう。 きっと、怒るよりもすごく寂しそうな顔して…… 「…………。」 不自然に冷凍食品コーナーを眺めて棒立ちしていた数人の瞳にフッと闘志の炎が灯る。 弱音を吐くな、安堂数人…!恥ずかしいのがどうした、堂々としろ!こんな羞恥心、英護のガッカリした顔を見ることに比べたら大したことないはず…かもしれないしそうじゃないかもしれない!! どっちにしろもう一度商品を戻して別の店を探す時間はない、勝負はここ、今まさに進行している!隣のマダムのレジにはすでに3人ほど並んでいる。瞬間的にかごの中身を見た限りて○がを買おうとしているのは自分だけのようだ。それでも、ここでやらなきゃ…行動しなきゃ、間に合わなくなるんだ! レジ前を通って、マダムの列の最後尾に並ぼう。あとは野となれ山となれ作戦だ。数人は1歩1歩、革靴を踏みしめて前へ進むと…
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