えぴ56

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「はあ、はあ…」 エレベーターから廊下を全力ダッシュしたせいで息切れしていた。膝に手をついて肩で息をしていた数人は顔を上げると懐かしささえある我が家の扉を見て安堵のため息を漏らす。 お使いは成功した。後は英護に謝罪し、事情を素直に話そう。そうすれば怒りを静めてくれるだろう。完璧なプランにドアノブに手をかけた瞬間、忘れかけたことを思い出す。 そうだ…そういえば彼は「買ってきたら即使う」とか言ってなかったか?言ってたような。それってつまり、このドアを開けた途端に彼によって玄関に押し倒され、忍耐の結晶であるこのオモチャを使われる…? 「…………っ!」 想像しただけで数人の頬は、耳はみるみる紅潮し湯気すら立ち上る。そしてドアノブがまるで熱された鉄に触れたかのように、反射的に手を引いてしまった。 「……っ、……!」 そう、だ…きっとそうだ。これ以上心臓が早く動いたら多分破裂する。そしたら英護は救急車呼んでくれるだろうか、いや今はそれじゃないか。ドアを開ければおそらくこのオモチャを使ってお仕置きと言う名の快楽地獄で反省させられてしまう。自分の意思で、ドアを開けた瞬間。 「…………っ。」 むっ無理無理無理無理超無理本気無理。 これが英護に出迎えられ、無理やり腕を引き込まれてしまうのであれば「逃げようがなかった」と自分に言い訳することができる。 だが現在は、フラグ設定は己にある。 自らの意思でドアを開けた瞬間引き込まれドアは閉まり、彼に押し倒されて陰茎をいじめ抜かれて何度も何度も射精させられてしまうっ…♡だめだ、想像で勃ってきた! なんで、どうして自分の家に帰るのにこんなに悩まないといけないのだろう、大体かなり寒い。 「…………。」 うう、肩が震えるのは興奮のせいか寒さのせいか。ここで生存するためには…英護がもう気にしていないことに望みをかけるしかない。それで焼きのりを使って、巻き寿司でも巻こうそうしよう。 覚悟を決めて、ドアノブに手をかけ回す…! 「…………っ。」 やっぱり臆してドアの隙間から中の様子を窺う。はっきり見えた、玄関に仁王立ちする英護の姿。 はい、詰みました。
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