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「着いた着いたっとぉ。」
「…………。」
ボスはヘビメタがお好きなんだろう、しかし特定のバンドの特定の曲しか流さないためまだ耳の中ではセンシティブな単語が流れてる。耳壊れそう。
ボスがその体格からは想像つかない軽い身のこなしで軽トラを降り、そのまま海の方へ歩いて行き、タバコをふかす姿を見てようやく我に返る。数人も慌ててシートベルトを外し、後を追いかけた。
「…………。」
ボスは振り返ることなく、しみじみと潮の満ち引きを眺めて黄昏ていた。
数人は気まずそうにその後ろに立っている。
「先に言っとくけどなあ、何か事情を知ってるわけじゃないし大した話は出来ん。」
「それでも、お話いただけるのであれば…」
「分かっとる。ワシが教えられるのはあいつと出会った時の話くらいしかないからな。納得出来なくても文句言いなさるなよ。」
「もちろんです!ありがとうございます!」
数人がその場で勢いよく頭を下げると、ボスは海を見たままもう一度タバコをくゆらす。
そして、細く紫煙を延ばすとゆっくりと語り始めた。
「何年前だったかなあ。確かその日は天気も悪かったんだよ……」
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